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Vol. 52 大学生を教育すること 2

先週に引き続き、ライフスキルについてお話させていただきます。 前回は、大学生教育の範疇として「生活指導」が必要なのではないか、またその手段としては問題解決能力・対人コミュニケーション能力・意志決定能力などを育てるライフスキル教育が一つの有効な手段になりうる、というお話をさせていただきました。 大学生ということに話を戻してみます。 大学生、と聞いて何を連想されますか。ほんの数年前までなら、違った答えが返ってきたかもしれませんが、今は多くの方が「不祥事」「犯罪」「大麻問題」「運動部内のイジメ」といったことを連想されるのではないでしょうか。 大変残念なことではありますが、これが現実でもあります。 例えば、今年の3月に関西のある4大学が共同で行った大学生への意識調査では、実に3割の学生が、「大麻は何とか手に入る」と考えています。背筋が凍るような現状です。 また同じ調査では、使用者増加の理由について、「大麻を先輩や友達にすすめられるから」と答えた学生は42.6%にのぼり、私たちの想像をはるかに超えるレベルで、学生に薬物蔓延が進んでいるということがわかります。 学生の意識として顕著なことは、「個人の自由」という感覚で、大麻の使用に関しては、「他人に迷惑をかけなければ個人の自由」と考える学生は7.7%、また「もし友人が使用していても、個人の自由なので放っておく」と考える学生は10.2%となっています。 これは、薬物は危険であり、法律で禁止されているものだという倫理観よりも、「個人の自由」という便利な言葉による間違った個人主義を表していると考えられます。 また、「大麻には中毒性がない」「体に悪いものではない」という、偏った見解が広がっていることも大きく関係していると思います。 大麻はその薬物性だけが問題なのではなく、大学生にとって「手に入りやすい」という感覚を抱かせるものであり、それが、さらに中毒性が高いと言われる覚醒剤などの薬物使用への入り口となるからです。 また脱法行為を平気で犯すということに対しての無感覚、無知、無責任が将来の若者の人生を必ずマイナスに導きます。 これは、私が中学校の現場にいたときに、シンナー吸引をする中学生や高校生が、やがて大麻、覚せい剤、暴力行為と犯罪のエレベーターを一気に上ってしまったことから考えても明らかです。 上記のような大学生を取り巻く環境、また大学生自身の意識を考えたときに、ここ数年、とくに問題が起こった「大学生とスポーツ活動」に焦点を当ててみると、新しい解決策が見えてきます。 スポーツに長年にわたり携わってきた私は、スポーツを「競技活動」という面からではなく、「教育活動」という面からもとらえています。 スポーツの特性としては、以下のようなものが考えられます。 1.自己肯定感の育成(長所の発見、発揮) 2.協調性・協同一致の精神の育成(仲間作り、助け合い、責任感) 3.正しい競争意識の育成(認め合い、不条理を知る) 4.耕平・公正な態度や思考の育成(フェアプレー、スポーツマンシップ) 5.開かれた価値観の育成(正しいコミュニティ形成) 6.忍耐力の育成(継続力、我慢強さ、意志の力) 7.社会性の向上(地域貢献、教育的側面) 大学における運動部の活動においては、以上のような観点を持ち、クラブ運営を行うことが大変重要です。 ただし、大学の部活動においては、中学校や高校での「顧問」にあたる指導者がいないこともあり、運営やスキル向上はその部に一任され、学生の中で役割を決め活動している部も多く存在しているということも考えなくてはいけません。 だからこそ、指導者がいる、いないに関わらず、全ての部活動に対して一律で行われる教育が必要不可欠なのではないでしょうか。 「学校」と名前がつく施設の中で行われる活動は全てが「教育活動」であり、教育的効果を生むことを目的として実施されるべきです。 日本の現状においては、上記のような目的意識を持って取り組む部活動は、半ば偶発的に生まれるものとなっており、例えば、指導的素質を持った学生がたまたまキャプテンだったから、たまたま学生同士の仲が良かったから、なんとなくそういった雰囲気だから、といった根拠のないものとなっています。 私は長年にわたり、ある大学の「運動部リーダー合宿」で講義をしています。 学内の運動部の幹部学生たちが一同に会し、部を超えて交流を図る中で、大学体育会として一丸となって目指すべき目的・目標を決定する、大変意義深い会となっています。 おそらく多くの大学で開催されるこういった「体育会のリーダー会議」において、自らを取り巻く環境を現実として認識させ、問題意識を提起し、人間力向上教育や「安全教育」として薬物問題や危機管理問題に取り組むことが緊急課題と言えるでしょう。 以上のような意識を強く持ち、指導的立場にある大人は、それぞれの専門知識と全人格をもって教育にあたることが重要です。 私は、自立型人間育成教育を通して、大学生にライフスキルを教え、未来を拓く人材を育てていく所存です。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 (原田隆史)