メールマガジンバックアップ

Vol. 61 失敗とどう向き合うか 2

前回は、「失敗した人に対する問いかけ」についてお話させていただきました。今回はさらに踏み込んで、失敗した人に寄り添い、失敗を成功に変えるための具体的な方法について考えてみましょう。 【×を○に変える】 失敗したということは、取り組みにおいて何かが悪かったということ。 例えば、先週のお話の女の子は、前の晩にお父さんと一緒に漢字の勉強をして、100点満点を目指しましたが、翌日の結果は20点でした。 何が悪かったのでしょう。 勉強時間が足らなかったのか、漢字を書く回数が少なすぎたのか、テスト本番で緊張して頭が真っ白になってしまったのか。それとも、お父さんと勉強することが楽しかっただけで、本気で100点を取ろうという気がなかったのか。 いろいろと考えを巡らせてみても、「これだ!」と思うものには、なかなか辿りつきません。 これは当然のことで、失敗や問題点というものは、ただ一つのことが原因で起こっているのではなく、様々なことが複合的に絡み合った結果起きているからですね。 そこで私は、失敗して悩んだり落ち込んだりしている人を前にすると、「心・技・体・生活」の4つの観点から、その失敗の分析をしてもらうことにしています。 心の状態・やる気の面、スキルや専門知識の面、体や健康の面、そしてあなたという人間の生活(私生活・生活態度・家族との関係)という面。 こうやって的を絞って考えると、拡散しがちな失敗の分析の結果が、一気に集約されます。その分析結果を文字にして書いていけば、自分の失敗の原因となった要素を、冷静に、客観的に見ることが出来るのです。 しかし、私は、失敗の原因だけについて考え、分析し、そのことだけをいつまでも意識する、ということはおすすめしません。 そういうことを繰り返すと、「失敗した自分」が、頭の中で強化されてしまいます。 マイナスイメージの自分が強化されると、「次も失敗するんじゃないか」「どうせ自分は上手くいかない」といった心理状態になってしまいます。 失敗すると、まるで何もかもがダメだったような気がしてしまうものです。 しかし、「心・技・体・生活」の4つの面から失敗を分析すると、ダメなことばかりではなかった、ということを冷静に理解することが出来ます。 失敗した。反省した。分析した。その次にすることは、気持ちを新たにし、「じゃあ本当はどうしたかったのか」という理想像の実現に向けて「行動を起こすこと」です。 こんな例はどうでしょうか。 今日の営業のプレゼンでは、思ったように話ができず新規契約の獲得には至らなかった、というビジネスマンについて考えてみます。 営業に行く前のやる気はすっかり消え失せ、自分が全くダメな人間であるかのように感じているかもしれませんね。 「ああ、何がダメだったんだろう」「ああ、俺って最悪だ」 失敗について漠然と考えていると、このように「人格否定」の言葉ばかりが頭の中を駆け巡り、自分で自分を「ダメな人間」と決めてしまうことになります。 ここで、「心・体・技・生活」の4観点から冷静な分析を行ってみます。 心「今日はやる気が空回りしていたな。ちょっと緊張気味だったな・・・」 技「自社の製品に対する質問には、自信を持ってよどみなく答えることができたぞ」 体「風邪気味で咳が出そうになり、プレゼンに集中できない時があった・・・」 生活「昨日、遠距離恋愛の彼女と電話で話をして、頑張ろうという気がわいたな」 こういった「気づき」を、日誌や自分の営業ノートに文字でまとめていきます。 そうすると、「悪いことばかりではなかった」と、失敗の中においてもキラリと光る、「改善のためのプラス要素」に目を向けることができます。 そして、前回もお話した、「本当はこうしたかった」という理想の自分と、失敗してしまった現在の自分のギャップに気付き、それを埋めるためのアクションを考えることができるのです。 「そうか、僕は、自社の製品に対する知識とプレゼン力は十分にあるのに、今日は体調管理をしていなかったがために、実力を発揮できていなかったんだ」 「やる気が空回りして、必要以上のプレゼンをしてしまっていたな」 「十分わかっている、という気持ちが『おごり』を生んでいたな・・」 「よし、来週もう一度アポイントをとり、営業プレゼンの台本を作り、よりスマートなトークを目指そう。先方の要望を聞く時間をもっと取ろう。そして何より体調管理だ」 目標を達成する「成功の道のり」においても同じことで、何もかもが上手くいったわけではなかったはずです。 小さな、部分的な成功でも、それらを集めて伸ばしていき、逆に小さな、部分的な失敗を大きな失敗にならないうちに摘み取っていった結果、目標を達成していたのです。 プラス面を強化し、マイナス面を弱めるということです。 失敗と思われることの中にも必ずある部分的な成功を、「書く」ことによってスポットライトを当て取り出し、プラス面のさらなる強化に役立てていく。 こういった仕組みを日誌やルーティン行動を用いて、仕事や生活の中に作り上げていき、気付きから行動できる自分を作るということが重要なのです。 最後に、余談を一つ。 楽天イーグルスの監督を昨シーズン限りで辞任した野村克也氏といえば、「ぼやき」が有名ですね。 その野村氏が、「ぼやき」をこんな風に定義していました。 「まず理想がある。理想をかかげているのだが,現実はなかなか理想に追い付かない。 理想と現実の間にある、『こうすれば、ああすれば』というのがぼやきである。 だから、理想はいつも高い」 野村氏の「ぼやき」は、ある時にはただの不平・不満や、あからさまな選手批判に聞こえますが、彼がそれでも「名将」と呼ばれるのは、そういった「理想と現実のギャップを埋める『ぼやき』」を、具現化する、あるいは選手に具現化させる、つまりは「アクションを起こす・起こさせる」ことのプロだったからではないでしょうか。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 (原田隆史)