メールマガジンバックアップ

Vol. 47 子どもを育む家『家庭』

私は現在、複数の新刊の準備にとりかかっています。どれもジャンルが違い、どれも今までの私の著書とは異なる趣になるはずです。どうぞご期待ください。 新刊を進めるにあたり、私は子どもと家族の関係について最近よく考えています。 今回はそのことについてお話させていただきます。 以前新聞で読んだ、ホームレスの人々を支援しているある男性の記事が大変印象に残っています。 支援団体の代表であるその男性は、中学生によるホームレスの無差別襲撃について触れていました。 襲撃を受けたホームレスの男性が、その男性に語った話が紹介されていました。 以下は襲撃を受けたホームレスの男性の言葉です。 「自分たちには住む家がない。路上で暮らす無抵抗な自分たちを襲った中学生には本当に腹が立つ。しかし考えてみれば、あの中学生たちも、家がないのではないか。住む家はあるかもしれない。でも、心が落ち着く『家』はないんだ。そう考えると中学生があわれだよ。」 支援をしている男性は、次のようにまとめていました。 「家には2種類あります。ただ、体を休める『家』と、心が戻る『家』、つまりhouse(ハウス)とhome(ホーム)の違いかもしれません。家は、ただの家ではなく、『家庭』であるべきなのです。ホームレスの人々が、本当に『ホーム』をなくしてしまわないよう、私たちは心に寄り添う支援もしたいと考えています。」 家に帰る、誰もいない。テレビを見ながら晩御飯を食べる。誰も帰ってこない。 寂しさや言いようのない不安に苛まれ、手あたり次第に友達にメールをする。 返事があった者同士が集まる。深夜まで遊ぶ。帰る。寝る。そして朝が来る・・・。 このような、いつかドラマで見たような生活を送っている児童・生徒が本当にたくさん存在しています。 このような生活を送る児童や生徒にとっては、家はまさに「家」としての意味しか持たず、「家庭」としては全く体をなしていないことがわかります。 どんな子供にも、生まれたときには確かに「父親と母親」が存在しています。 その後の人生においては、不慮の事故や悲しい出来事が原因で父や母を亡くしたり、別れてしまうこともあるかも知れません。 しかし、父がいて母がいるから「家庭」が出来上がるのではないと考えます。 「家庭」とは、子どもを健全に育む、子ども取り巻く家族の環境のことを指します。 私の教え子のある4人きょうだいは、幼くして父母を交通事故と病気で亡くしました。 叔母さんの援助を受けながら4人で助け合い支え合い、今では全員が立派に成長しています。彼らは中学生のころ、亡き父母を思い出し涙することもありましたが、彼らには、父母亡きあとも心が帰ることのできる、温かい『家庭』があったのです。 父母が健康で、仲良く、子どもの成長を温かく見守る環境があるに越したことはありません。 しかしここで大切なことは、父と母がいる、ということだけではなく、子どもを取り巻く父母を含む大人たちが、それぞれに役割を担い、『チーム』として、子どもの健やかな育成に携わることです。 ご自身のご家族について考えてみてください。 まだご結婚されていない皆さん、あなたが幼かったころ、ご両親や他の『あなたの家庭』のメンバーの方々は、どうやってあなたを、今のあなたへと育んでくれましたか。 また、将来あなたが、あなた自身の子どもを持つ時、あなたはどんな『家庭』で、子どもを育んであげたいと考えますか。 すでにご自身のご家庭をお持ちの皆さん。 お子さんがおられるご家庭では、子どもを健やかに育てるために、家庭を構成するメンバーで話し合いを持っていますか。 子育てはお母さんに任せたよ、おばあちゃんお小遣いあげておいてね・・・誰か任せにはなっていませんか。 お子さんがおられないご家庭では、お互いの立場を理解して、お互いの理想の家族に向けての、前向きなお話合いの機会を持っておられますか。 ある学力向上の調査では、子どもの学力向上に影響する最も大きな環境要因は、「家庭環境である」との結果が出ています。 これは一概に経済状態や家庭構成の問題ではなく、子どもを取り巻く大人たちが何を考え、何を目的として、どんな思いを持って子どもの教育に携わっているかが大切であるということを、如実に表していると言えるでしょう。 子どもを育てるとは、その子どもをどんな大人に育てるか、ということです。 私たち大人が、本気で関わらずして何をなし得るでしょうか。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 (原田隆史)