メールマガジンバックアップ

Vol. 71 感性を響かせる

新しいスタートの春です。 この時期にはたくさんの方から、次のような質問を頂戴します。 「うちの息子が春から高校生になります。何かアドバイスをしてやってください」 「春から大学生になって一人暮らしを始める娘に、一言お願いします」 「うちの子どももいよいよ社会人デビューです。何を心がければよいですか」 質問してくださった方やその子どもさんのことを良く存じ上げている場合には具体的なアドバイスもしやすいのですが、講演会や研修などで、その日初めてお目にかかった方からのご依頼の場合には、頭を悩ませるところでもあります。 また、親御さんが「ほら、思い切って聞いておいで」と、お子さんを私のところへ直接質問に来させるということもあります。 大人にはざっくばらんな話もしやすいですが、子どもに話すとなると言葉を選びながらということになります。 しかし、そんな大事な質問をわざわざ私に聞いてくださっているのです。責任感を持って答えないわけにはいきません。 また、私は長年、中学校の教師をしていましたので、大人の教育を多く手掛けるようになってからも、「中学生や小学生にもわかる言葉」で、自分のメソッドや思いを人に伝えることを常に心がけていますし、またそれが得意でもあります。 そこで私は、相手が大人であっても子どもであっても、次のようなお話をさせていただくことにしています。 「大人の世界では、とんでもなく信じられないようなことが起きることがある。 それは、びっくりするぐらい嬉しいことのときもあれば、ものすごく不条理で 納得できない、腹の立つことのときもある。  その、不条理なことが起きた時に、人としての『正しい反応の仕方』を絶対に 忘れてはいけないよ。 大勢の人の中に入ると、その反応の仕方に自信が持てな くなってしまうことがある。とんでもなく不条理なことが起きた時、自分の 正義や信念に照らし合わせて感じた『え、それっておかしい』という気持ち、 それを大切にしなければいけない。 周りの反応に気を使って、『おかしいと思う けど、みんな反応してないから自分も・・・』などと考えてはいけないよ。  自分を見失わないように、自分の感性を磨いておきなさい」 例えば、電車の中ではよくこういった光景を目にします。 夕刻の混雑した車内で、二人の女子高生が座って声高に話をしています。そこは優先座席、窓には「この座席を必要とする方には座席をおゆずりください」というシールが貼ってあります。 そこに、杖をついたおばあさんが乗ってきました。 おばあさんはキョロキョロとあいている座席を探しましたが、座席は埋まっており、吊皮を求めて、二人の女子高生の座っている前に立ちました。 私が今まで目にした中では、ほとんどの若者はこの時点で席をさっとゆずります。きっと自分のおばあちゃんやおじいちゃんの姿が目に浮かぶのでしょう。その姿はさわやかで気持ちの良いものです。 しかし残念ながら、この二人の女子高生は、座席をゆずろうとはしませんでした。まるでおばあさんが見えないかのように、ずっと大声で話を続けています。 この光景をあなたが実際に目にしたとき、あなたの心に最初に浮かぶ気持ち・感情・考え、それがあなたの「感性」です。 「おいおい、席をゆずれよ」 「まったく最近の若者は・・・」 「どうして席をゆずらないんだろう」 「僕がゆずるよう、声をかけよう」 たとえ周りが無反応だったとしても、あなたの心に響いた「感性の声」を聞き、行動してほしいということです。 私はこの世の中が、「筋の通った世の中」になることを強く願い、そのために日々を生きているといっても過言ではありません。 世の中は、いつも正義が勝ち、真実が嘘を破り、輝かしい成功が約束されているわけではありません。本当はそうあってほしい。しかし、現実には、正義が負けることもある、嘘がついに破られないこともある、成功までの道のりには数多くの困難と挫折がある。 どんな仕事にも人生にも、頭では理解できても心が納得しない、という類の「不条理」が起こるものです。 それに負けないでほしい。その不条理の持つ圧倒的な負のパワーに押し流されないでほしい。 不条理なことが起きようとも、流されずあきらめない強い心と、筋の通った判断力を身につけてほしい。 これが、これから大人になる全ての若い人たちに伝えたいことです。 そして私を含む大人こそが、若い人たちの生き方モデルとなれるよう、不条理にもくじけない、強い心と筋の通った態度を身につけ人生に挑んでほしいと考えています。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 (原田隆史)