受講者の声
FAN VOICE
2025.12.22
MASTeC KOBE 大木様
FAN VOICE : 神戸マツダ(MASTeC KOBE)様
MASTeC(マステック) KOBE 大木芳子さんインタビュー
自動車整備士という仕事の社会的地位を上げたい——そんな思いを胸に、神戸マツダが開校を目指す新たな整備士専門学校『MASTeC KOBE(マステック コウベ)』の設立準備の中核を担うのが、大木芳子さんです。
前職は自動車整備専門学校の教員として、自動車整備士の国家試験合格を目指す学生を日々指導してきた経験を持ち、現在は原田メソッドを取り入れた「自立型人間育成」を軸に、新たな整備専門学校の設立に向けて尽力されています。
新しい学校の考え方を形にするところから、先生たちが教えやすい環境づくりまで、多方面で力を発揮している、情熱あふれるキーパーソンです。
大木様のインタビュー内容をお送り致します:
Q まず、神戸マツダに入社された経緯を教えてください。
大木様:当時の私は、専門学校で働きながら、送り出した卒業生たちが自動車ディーラーに就職しても離職率がとても高いことに疑問を持っていました。「どうして辞めてしまうのか」「現場で何が起きているのか」を知りたいという気持ちがありました。
その頃、神戸マツダの求人を目にしました。ここで働けば、教え子たちが辞めてしまう理由を知るきっかけになるかもしれないという思いが少しありました。そんな、軽い気持ちで採用試験を受けたのが始まりでした。
橋本社長との面接で、私は「自動車整備士を目指す学生を学校で育て送り出しているけれども、社会から大切にされているように感じない。もっと働きやすくしてあげたい。”整備士をしていてよかった”と思える社会にしたい」と話しました。すると橋本社長からも「僕も自動車整備士の社会的地位を上げたいとずっと思っている」という話を聞きました。初めて、同じ課題意識を持つ人に出会った感覚がありました。「5HAPPY(ファイブハッピー:弊社の経営理念)」の理念も含め、社長の考え方が自分の想いとぴったり一致しました。
当時、大手自動車メーカーから内定をもらっており、そちらに進むつもりでいました。
ですが、橋本社長の夢でもあった学校設立の話も聞き、「一緒に整備士の社会的地位の向上を実現しよう」と言っていただいたこの面接をきっかけに入社を決めました。
Q 前職の専門学校時代、教壇に立ちながら どんな課題を感じてこられたのでしょうか。
大木様:一番大きかったのは、「思いどおりに教育をやりきれない」という現場のジレンマです。私立学校の教員は会社員扱いなので、公立のような“みなし残業”がありません。学生のために時間をかけたいと思っても、労働時間の壁がどうしてもついて回りました。
また、学校で教員をしていると外部との接触がほとんどなく、教室の中だけで時間が過ぎていくため、世間の常識や社会の進み方についていけていないのではないかという怖さを感じていました。「先生と呼ばれることで、自分が偉いと思ってしまう」そんな気持ちにはなりたくないという思いが常にありました。
ただ、学生と話をしているのはやっぱり楽しかったです。男の子が多く、20歳前後という年齢で少し子供っぽいところも可愛かったですね。学生と教員の距離が非常に近い学校でしたので、「先生 兼 先輩 兼 友達 兼 親」のような関係性が築けていました。卒業しても連絡をくれたり、私が学校を退職したことを気に掛けてくれている卒業生も多く、短い教員生活の中で大きな財産になったと感じています。
Q 国家資格取得のための勉強を教えることに対して難しいことはありましたか?
大木様:私が専門学校の4年生だった時に受けた1級自動車整備士の国家資格の試験では、その専門学校の歴史の中で過去最低の合格率…学校内で56%という結果でした。どうして自分たちの学年がダメだったのか、友達が落ちてしまったのかを考えるきっかけになり、これが教員時代の指導の方法にも大きく反映されました。
私自身、教職に就き「先生」とは呼ばれつつもエリートではなく、勉強が全くできない中学、高校時代だったので、そういった学生の気持ちがわかります。授業では分かりやすい説明はもちろん「記憶に残る」「身近なものに例える」「体を使って学んでみる」など色々と工夫を凝らして授業をしていました。授業を考えるのは楽しかったですし、素直な学生の反応を見るのは嬉しくも勉強にもなりました。その経験は今の仕事にも活かされていると思います。
Q 教員時代の印象的な思い出はありますか?
大木様: 担当学年の学生が亡くなるという悲しい出来事が最も深く残っています。
教員という仕事をしていて、自分が教えている学生が亡くなるという出来事に直面することは無いはずが無いとは思いつつも、まったく想像できていませんでした。
ただ、その時に驚かされたのは、同級生たちの行動です。亡くなった学生のご両親に感謝の気持ちを伝えたり、彼の学校での様子が分かる写真や愛用品を渡したり、彼の生きた証を毎年集まって友達同士で語り合ったりと、自分たちで考え、自分たちで動いていたのです。
普段は子どもっぽく、まだまだ未熟だと思っていた学生たちが、友達のために行動する姿を見て、「私たちが思っている以上に、学生たちは自分で考え、いろいろなことができるんだ」と教えてもらった、大きな出来事でした。
Q 来年度に開校する新しい学校について、どんな準備を進めているのでしょうか。
大木様:まず、この学校づくりの中心にいるのが、校長予定者の山本修弘です。元マツダの技術者で、長年クルマづくりの最前線にいました。
山本は「この学校の卒業生には“社会のヒーロー”になってほしい」という強い思いを持っています。
テーマは「自分で考え行動できる人財を育てる学校」です。
たとえば、学校の規則ひとつにしても、国が定める法令に基づく部分は当然ありますが、日々の生活に関わる細かなルールについては、学生たち自身に提案してもらい、共に創り上げていく方針です。
掃除当番の決め方や、飲食スペースを教室でも許可するのか、それとも談話室のみにするのかといったこと。また、学生が利用するシステムでの出欠入力や課題提出のマニュアル作成に至るまで、さまざまな事柄を学生の意見を取り入れながら決定していきます。
新しい学校を創る上で、一から規則を作るという最大の強みを生かして、自立を育む環境にしたいと思っています。
私自身の経験からも、厳しすぎる規則は学生と教員の双方を疲弊させることを実感しています。だからこそ、学生が自分で考え、自分の学校として関わる仕組みを大切にしています。ルールづくりに主体的に関わることで、権利と義務の関係を理解し、自立へとつながる力を育てたいと考えています。
Q お聞きしただけでワクワクします。教員の方々はどんな方ですか。加えて、この学校を率いる校長先生はどんな方なのでしょうか。
大木様:教員の方々は非常に個性的で、一言で言うと「めちゃくちゃおもろいです!(笑)」でも、お仕事もバリバリ進めてくれるので本当に頼りになります。神戸マツダ内で公募を行った結果、専任4名と兼任3名の計7名が選ばれましたが、これは数百人ものサービススタッフの中のわずか7名であり、社長も私も喜んだほど素晴らしい方々です。整備士という技術職でありながら、仕事ができるからこそ後輩に伝えたいという思いを強く持っている方が多く、教育への情熱を感じます。
教員の方々はそれぞれに多様な個性を持っています。例えば、こだわりが強い方もいれば、柔軟な考え方を持つ方もいます。若くしてしっかりしている方もいれば、ベテランでありながら物腰が柔らかく、人間味あふれる方もいます。「職人」というイメージにとらわれない、年齢、趣味もバラバラな多様なバックグラウンドを持つ教員が揃っています。
たとえば電気装置の授業担当の増田先生という先生は、整備士には珍しくパソコンにとても強く、学校設立部署配属後わずか半年ほどで、独学でマクロを組めるレベルにまでスキルを高めました。「楽しいから」と言いながら、ご自身で本を読み込み、自分で考えながら機能を形にしていくその探究心!「車の整備だけでなく、きっと別の分野でも成功していたのでは…?」と思わせるほどの先生です。
そして、この学校を率いる山本修弘(校長予定者)の存在も大きいです。山本はマツダ株式会社で、ロータリーエンジンやRX-7・ロードスターなど、名車の開発に長年携わってきた技術者であり、4代目ロードスターでは開発主査も務められました。ル・マン優勝車787Bのエンジン開発にも関わっていた、まさに“マツダの魂”を体現してきた方です。
また、マツダ(株)初の「ロードスターアンバサダー」としてファンや若い世代と向き合い、全国で講演会や小学校での授業などを通じて、技術だけでなく「夢を持つ素晴らしさ」を語る活動にも力を注いでいます。学生にも先生にも深く寄り添える方で、教育理念にも芯がある。私自身「この人となら、ほんとうに新しい学校を創れる」と感じています。
Q 設立予定の学校で原田メソッドを導入されますね。うまくいきそうですか。
大木様:正直に言うと、原田メソッドの導入は、そう簡単にはいかないだろうと覚悟しています。今の学生たちは、文章を自分で考えることや、何かを毎日続けることを嫌う傾向があると思っています。原田メソッドが求める「自分で考え、言葉にし、続ける」というプロセスを学生に腹落ちさせるのは簡単ではないと感じています。
そのためには、まず教職員が学生に原田メソッドの価値を理解させ、実践へと導くスキルがものすごく試されていると感じています。私自身も、神戸マツダに入社してから原田メソッドを知りました。この会社に入って最初に取り組んだ仕事はオープンウィンドウ64を完成させることでした。中心の目標は「整備専門学校の設立」とし、「本当に学校を創れるのか…?」と半信半疑で完成させたことを覚えています。当時書いたオープンウィンドウ64を今見返すと恥ずかしい部分もありますが、あのオープンウィンドウ64を完成させた日から約3年かかり学校が開校しようとしています。私自身が感じた「目標は達成できるものなんだ」という気持ちを学生にも持ってもらいたいです。でもまずは、「1つできた」という気持ちを知ってもらう、そんな進め方をしたいと考えています。
そこで、私たちはまず「小さな目標」を設定するところから始める予定です。例えば、定期試験で全教科平均90点以上を取るような高い目標は、今は最後で良いと思っています。それよりも、「毎朝7時に起きる」「9時に学校に来る」「先生に挨拶する」といった、その学生にとって「ちょっと頑張ればギリできそう」な、小さな目標を見つけることが重要です。このような小さな成功体験を積み重ねることで、「1個できた、2個できた」という達成感を育て、自己効力感を高めてもらえるような内容にしたいと考えています。
学生一人ひとりの状況を深く理解した上で、その子に合った目標設定を一緒に行っていくことを大事にしたいと思っています。みんなが同じ目標を持つのではなく、個々の学生が今頑張りたいこと、それは学校のことだけに限らず、それぞれのレベルに合わせたスモールステップをつくっていくことで、原田メソッドの良さを自然と体感してもらい、最終的にはより大きな目標にも挑戦できるようになると考えています。
Q 自動車整備士という仕事の社会的地位について、どんな思いをお持ちですか。
大木様:自動車整備士は命を乗せた車の安全を守る技術と知識があることを示す国家資格です。しかし、その事実を知らない人も多く、多くの人は整備士の仕事を直接見る機会はまだまだ少ないと思います。社会の中で必要とされているのに、職業としての認知がまだ低いのが現実です。
また、現場で働く整備士自身が、自分の仕事を低く見てしまっている傾向があると感じています。「勉強が出来ないから整備士にしかなれなかった」など、自分で自分を下げる言葉がよく使われてしまいます。でも、同じ国家資格を持つ医師が同じことを言うでしょうか。医師も整備士も同じプロフェッショナル。社会を支えるエッセンシャルワーカーです。私は、整備士が胸を張って「この仕事が好きだ」と言える社会を作りたいです。
■編集後記
大木様の前職時代の話を伺う中で、「先生 兼 先輩 兼 友達 兼 親のような関係性」という言葉が出てきたとき、やはりと思いました。多くの場合、この距離感は“馴れ合い”になってしまうこともありますが、大木先生の場合、厳しさと楽しさを状況に応じて使い分ける軸があり、学生から信頼されていたのだろうということがよく分かりました。
なかでもインタビュー中に心を動かされたのは、大木様が、「学校設立の仕事をずっとしてきたので、入学してくる学生はもちろん、学校の建物や設備、認可にかかる申請書類一枚に至るまで愛おしい」と語られたことです。1期生の学生と出会う前から学校創りに関わってきたからこそ、その一つひとつに愛情を感じておられるのだと思います。ご本人は「こんな感情気持ち悪いかもしれません」と笑っておられましたが、私はこれこそが神戸マツダの学校の成功を約束する証拠になる、原田メソッドの「何を、どんな心でやるか」というパフォーマンス方程式を体現していると感じました。
実力と想いを高いレベルで併せ持つ先生、スタッフの方がいるからこそ、きっと学生たちは幸せに学び、誇りを持って社会へ羽ばたいていくでしょう。こんな素晴らしい教職員と「ともに」学び、学校を創り上げていくことができる。そんな学生さんたちは、本当に恵まれています。
この学校が自動車整備士という仕事の価値を社会に広げていく中心となることを、心から期待しています。
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